軸力とは?ボルト締結での意味・計算式・トルクとの関係を解説

軸力

軸力とは

軸力

軸力

軸力とは、物体の軸方向に作用する力のことです。本記事では特に「ボルト締結における軸力」について解説します。ボルトを締め付けるとボルトは軸方向にわずかに伸び、その内部に引張力が発生します。この力がボルト軸力です。適切な軸力によって被締結部材が押し付けられ、接合面のすべりや分離、フランジからの漏えいなどを抑える役割を果たします。軸力の単位にはN(ニュートン)やkN(キロニュートン)が使用されます。1kN=1,000Nです。

フランジ接合部

フランジ接合部のボルト

たとえば、配管のフランジ接合部などでは、ガスや液体の漏えいを防ぐためには、ガスケットに必要な圧縮力(面圧)を与える必要があります。その圧縮力を生み出しているのがボルトの軸力です。逆に軸力が不足すると、内圧などの外力によって接合面が分離しやすくなり、ガスケット面圧の低下による漏えいにつながる可能性があります。また、振動や繰り返し荷重などによって接合面に相対すべりが生じると、回転緩みにつながる場合があります。使用条件によっては、ナットの回転ゆるみを抑える方法としてダブルナットなどの対策も用いられます。

重要なのは、締付けトルクは軸力を間接的に管理するための指標であり、締結部を保持するうえで重要なのは適切な締付け軸力を得ることです。そのため、トルク管理やテンショニング(引っ張り管理)は最終的に狙った軸力を得るための手段として行われているのです。わかりやすくまとめると軸力とは「ボルトが引っ張られることで生まれる締結力」であり、それがしっかりと確保されていることで機械や構造物は安全かつ長期間安定して使えるというわけです。これが「確実な締付け=適正な軸力を確保すること」と言われる理由です。

初期締付け力とは

ボルトの締付け作業終了直後の締付け力を、JIS B 1083では「初期締付け力」と呼びます。ボルト側に作用する軸方向の引張力に着目する場合は「締付け軸力」と表現されます。本記事では、わかりやすさのため締付け直後のボルト軸力を「初期軸力」と表記する場合があります。

残留軸力とは

ボルト締結後には、ガスケットのへたり・応力緩和、接触面のなじみ、クリープ、温度変化などによって、締付け直後の初期軸力から軸力が低下する場合があります。このように、一定時間経過後や使用状態でボルトに残っている軸力を残留軸力と呼ぶことがあります。

【参考記事】東京大学 大学院 工学系研究科(石原研究室)
タワートップボルトにおける締付トルクと導入軸力の関係について
https://windeng.t.u-tokyo.ac.jp/ishihara/presentation/2015-27.pdf

軸力と締付けトルクの違い・関係

項目 軸力 締付けトルク
意味 ボルト軸方向に作用する引張力 ボルト・ナットを回転させようとする作用の大きさ
主な単位 N、kN N・m
役割 締結部材を保持する力を生み出す 軸力を発生させるための入力
摩擦の影響 トルク法では摩擦条件により変動する ねじ面・座面の摩擦に大きく消費される
主な管理方法 軸力測定、テンショニングなど トルクレンチなど

締め付けのトルクと軸力を調整する際にはいくつかの重要な注意点があります。まず、最も大きなポイントは「トルクをかけること=軸力が正確に得られる」というわけではないという点です。締付けトルクの大部分はねじ面および座面の摩擦を克服するために必要となります。そのため、摩擦条件が変化すると、同じ締付けトルクを与えても得られる軸力が変化します。

例えば、潤滑剤を塗布した場合と乾いた状態で締めた場合では摩擦係数が異なるため、同じトルクでも軸力に大きな違いが生まれます。したがって、トルク値を設定する際には必ず前提となる摩擦条件(潤滑の有無、表面処理の種類など)を確認し、それに合わせて適切な値を選定しなければなりません。

また、使用するトルクレンチや油圧トルクレンチなどの工具が正しいトルクを発生させているかどうかも重要です。工具の精度は使用状況や経年変化などによって変化する可能性があるため、トルクレンチの校正や定期的な点検を行う必要があります。特に重要な締結部では、所定の校正・点検が実施され、精度が確認された工具を使用することが重要です。

また、ボルト・ナットの種類や状態にも注意が必要です。錆びていたり、傷が付いていたりすると摩擦条件が変化し、適切な軸力が得られない原因となります。著しい腐食、ねじ山の損傷、塑性変形などが認められる場合は、適用基準やメーカーの再使用基準に従って交換を判断してください。

加えて、複数のボルトを締める際にはその順序や回数にも注意を払うべきです。例えばフランジのような接合部では、均等に締め付けなければ一部のボルトだけに過剰な負荷がかかり、軸力がばらついてしまいます。例えば配管フランジなどでは、適用する規格や施工手順に従い、所定の締付け順序と複数回の締付けパスによって軸力を均一化します。具体的な締付け順序や回数は、対象となる締結体の規格・メーカー手順に従ってください。

適正な軸力を得るためにはトルク値だけに頼るのではなく、摩擦の管理、工具の精度、部品の状態、締め方の工夫など、複数の要素を総合的に管理する必要があります。トルク法において、締付けトルクは必要な軸力を得るための管理指標であり、重要なのは接合部に必要な軸力を適切に確保することです。この原則を理解し、それに基づいた作業を行うことで安全かつ信頼性の高い締結が実現できます。

軸力の求め方・計算式

弾性域においてトルク法で締付け軸力を概算する場合、次の関係式が用いられます。この式は締付けトルクから軸力を推定するための近似的な関係式であり、実際の軸力は摩擦条件などによってばらつきます。

軸力(F)=締付けトルク(T)÷{トルク係数(K)×ねじの呼び径(d)}

記号 意味 単位
F 軸力 N
T 締付けトルク N・m
K トルク係数 無次元
d ボルトの呼び径 m

トルク(T)

トルクとは、ボルトやナットを回転させようとする作用の大きさ(力のモーメント)です。単位はN・m(ニュートンメートル)です。

ねじの呼び径(d)

ねじの呼び径とは、ねじサイズを表す基準となる直径です。例えばM10では呼び径d=10mmとして計算します。

トルク係数(K)

トルク係数とは締付けトルクと軸力の関係を表す係数です。トルク係数は、ねじ部や座面の摩擦、潤滑状態、表面処理などによって変化します。そのため、同じ締付けトルクでもトルク係数が異なれば発生する軸力は変わります。トルク係数については「トルク係数とは?」で詳しく解説しています。摩擦の影響を含んだ経験則的な係数です。摩擦が大きい場合、同じ締付けトルクでも得られる軸力は小さくなる傾向があります。

例:M10ボルトを30N・mで締めた場合の軸力

M10ボルト(呼び径10mm)を、締付けトルク30N・mで締めた場合、トルク係数Kを0.2とすると:

F=TKd=300.20.01=300.002=15,000NF = \frac{T}{k \cdot d} = \frac{30}{0.2 \cdot 0.01} = \frac{30}{0.002} = 15,000\text{N}

したがって、この条件では計算上、約15,000N(15kN)の軸力が発生すると推定されます。

トルク係数によって軸力はどれくらい変わる?

以下は、トルク係数Kによる計算結果の違いを示すための例です。K=0.10~0.25を一般的な推奨範囲として示すものではありません。

トルク係数K 軸力F(N)
0.25 12,000 N
0.2 15,000 N
0.15 20,000 N
0.1 30,000 N

このように、同じ締付けトルクでも、トルク係数の設定値によって計算上の軸力は大きく変化します。

トルク係数は締結条件によって変化する

トルク係数Kは、潤滑剤の有無だけで決まるものではありません。ねじ部・座面の摩擦係数、表面処理、材質、表面粗さ、潤滑剤の種類などによって大きく変化します。そのため、実際の締付け条件を設定する際は、メーカー指定値や実際の締結条件で得られたトルク-軸力試験結果などを使用することが重要です。また、トルク係数Kは摩擦条件だけでなく、ねじ径やねじピッチ、座面形状など締結部品の幾何学的条件にも関係します。実測したトルク係数を使用する場合は、その値を得た締結条件や寸法の適用範囲を確認する必要があります。

トルク係数について詳しくはこちら

軸力と締付け力の関係

ボルトを締め付けると、外力が作用していない締付け状態では、ボルトには軸方向の引張力である「軸力」が発生し、被締結部材にはこれとつり合う圧縮力が作用します。JIS B 1083では、締付けにおいてボルト側に作用する軸方向引張力または被締結部材側に作用する圧縮力を「締付け力」としています。両者を区別する必要がある場合には、ボルト側の軸方向引張力を「締付け軸力」と呼びます。

適正な軸力が重要な理由

適正な軸力が重要な理由

ボルト締結では、軸力が不足していても高すぎても問題が発生する可能性があります。重要なのは、ボルトの強度や締結条件、使用環境などに応じた適正な軸力を確保することです。

軸力が不足した場合

軸力が不足すると、被締結部材を押さえ付ける力が小さくなり、接合面にすべりや分離が生じやすくなります。例えば配管フランジでは、軸力が不足するとガスケットに必要な圧縮力を与えられず、液体やガスの漏えいにつながる可能性があります。また、振動や繰り返し荷重を受ける締結部では、適切な軸力を維持できないことで緩みのリスクが高まる場合があります。

軸力が高すぎる場合

一方、必要以上に大きな軸力を与えると、ボルトに過大な引張応力が発生します。軸力が過大になるとボルトの引張応力が増加し、締付け時のねじり応力なども含めた組合せ応力が材料の降伏条件に達すると、ボルトに塑性変形が生じる可能性があります。また、ねじ山や被締結部材、ガスケットなどを損傷させる場合もあります。そのため、ボルトは強く締めればよいわけではなく、設計条件に応じた適正な軸力を設定することが重要です。

複数ボルトでは軸力のばらつきにも注意

フランジなど複数のボルトを使用する締結部では、それぞれのボルトに発生する軸力をできるだけ均一にすることも重要です。一部のボルトだけ軸力が高い、または低い状態になると、締結部に荷重が均等に分配されず、特定のボルトや接合部に負荷が集中する可能性があります。そのため、複数ボルトを締め付ける場合は、締付け順序や締付け回数、使用工具、摩擦条件などを適切に管理し、軸力のばらつきを抑える必要があります。

【参考記事】京都大学研究情報リポジトリ
既設橋梁の高力ボルト残存軸力と軸力管理方法に関する研究
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/277357/5/dkogk05042.pdf

軸力のばらつきを抑えて管理する方法

軸力のばらつきを抑えて管理する方法の一つが油圧式ボルトテンショナーによるテンショニングです。油圧式ボルトテンショナーは、締付けトルクによって軸力を導入するのではなく、ボルトを油圧で軸方向に直接伸ばして軸力を導入する工具です。ボルトを所定の荷重で伸ばした状態でナットを着座させ、その後油圧を解放することで、ボルトに残留軸力を与えます。

ボルトテンショニングはトルク法と比較して、ねじ面や座面の摩擦による軸力ばらつきの影響を受けにくい点が特長です。ただし、荷重移行時の損失やボルト間の弾性相互作用などを考慮して、適切な施工条件を設定する必要があります。たとえば風力発電設備や大型プラントのフランジなど、軸力管理が重要となる締結部でボルトテンショナーが使用されることがあります

一方で作業効率やコストの面からはトルクレンチを使用して締付トルクを管理する方法も一般的です。トルクレンチは、ボルトまたはナットに所定の締付けトルクを与えて締結する工具です。現場作業者にとっては扱いやすく、導入コストも比較的低いため、日常的な保守や製造ラインで多く使用されています。ただし、この方法では軸力の導入に摩擦係数の影響が大きく関わるため、締結結果の軸力にばらつきが生じやすくなります。表面粗さなどの条件によって、実際に得られる軸力が想定した値や計算上の推定値から外れることがあります。そのため、重要な部位では潤滑剤の種類や締結手順を厳密に管理し、実際の潤滑状態や表面処理などに対応したトルク係数、またはトルク-軸力試験結果に基づいて締付け条件を設定する必要があります。

【参考記事】科学技術情報発信・流通総合システム
油圧テンショナを用いたボルト締結体の軸力推定
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi/54/4/54_170/_pdf

軸力と緩みの関係

ボルトの軸力と緩みには密接な関係があります。軸力によって接合部材同士が強く押し付けられることで、接合面の摩擦によるすべり抵抗が確保されます。適切な軸力によって接合面の接触状態とすべり抵抗が維持されるため、接合部のすべりや分離を抑えることにつながります。一方、軸力が不足すると接合面にすべりや分離が生じやすくなり、条件によってはボルトの自己緩みにつながる可能性があります。そのため、適切な軸力によって接合面のすべりや分離を抑えられている範囲では、回転緩みのリスクを低減できます。

しかしながら、軸力が不足して接合面に相対すべりや分離が生じると、横方向の繰り返し荷重や振動などの条件によって、ねじ部に相対運動が生じ、回転緩みにつながる場合があります。また、温度変化やへたりなどによって軸力そのものが低下する場合もあります。

例えば、自動車のホイール締結部で必要な軸力が確保されていない場合、走行時の荷重によって接合面に相対すべりが生じやすくなり、条件によってはナットの回転緩みにつながる可能性があります。

このように、軸力は目に見えないものですが、緩み防止の要であり、確実に管理しなければならない極めて重要な力です。単にボルトを締めればよいというものではなく、狙った軸力を確実に得るために、トルク管理や摩擦条件の確認、工具の精度点検など、あらゆる工程を通して適切な締め付けが行われることが求められます。

ボルトの緩みを抑えるためには、必要な軸力を適切に確保し、使用中もその軸力を維持することが重要です。適切な軸力によって接合面の摩擦保持力が確保されると、外力による接合面のすべりや分離が生じにくくなり、結果として自己緩みのリスク低減につながります。逆に軸力が不足すると接合面のすべりや分離が生じやすくなり、条件によっては自己緩みのリスクが高まります。軸力は締結の「見えない主役」であり、その適切なコントロールが、安全で長期的に安定した構造や機械運転を実現するための鍵になります。

【参考記事】SpringerLink
ねじ締結具の緩みに関する研究のレビュー
https://link.springer.com/article/10.1007/s40544-021-0497-1
SpringerLinkとはシュプリンガー・ネイチャー社が出版する学術雑誌や書籍をオンラインで提供するプラットフォーム

トルク法における摩擦係数が軸力へ及ぼす影響

トルク法では、締付けトルクの多くがねじ面および座面の摩擦に関係します。そのため、ねじ面や座面の摩擦条件が変化すると、同じ締付けトルクを与えても得られる軸力が変化します。一般に、摩擦が大きいほど同じ締付けトルクで得られる軸力は小さくなります。

例えば、無潤滑の締結部や腐食・損傷したねじ部では、摩擦条件が大きく変化したり不安定になったりする可能性があります。一方、適切な潤滑によって摩擦係数が低下すると、同じ締付けトルクでもより大きな軸力が発生する場合があります。こうした違いは、製品の性能や安全性に大きく関わるため、摩擦条件を無視してトルクだけで締め付け作業を行うことは非常に危険です。

また、製造現場では、同じ締付けトルクで締め付けても、摩擦条件の変動によって軸力にばらつきが生じることがあります。このため、設計段階で摩擦係数の管理値を設定したり、潤滑剤の使用条件を明確に定めるなどして、軸力の安定性を確保することが求められます。

このように摩擦係数は見落とされがちですが軸力の再現性や安全な締結を実現する上で不可欠な要素です。トルク法によって軸力を管理する場合、摩擦条件の適切な管理は不可欠です。

【参考記事】ヤマハ発動機株式会社
ねじ締結と摩擦係数(2004-9 No.38 「コンポーネント技術」)
https://global.yamaha-motor.com/jp/design_technology/technical/feature/pdf/browse/38ts_03.pdf

軸力の測定方法

測定方法 特徴 主な用途
超音波法 ボルトの超音波伝搬時間の変化を利用 締結後の軸力確認など
ひずみゲージ ボルトのひずみから軸力を算出 試験・研究
軸力計・ロードセル 荷重を直接測定 締付け条件の検証・工具評価
軸力計を使用した軸力測定

軸力計を使用した軸力測定

ボルト軸力の測定・推定には、ロードセルなどによって軸方向荷重を検出する方法や、ボルトのひずみ、伸び量、超音波伝搬時間の変化などを利用する方法があります。測定対象や要求精度、使用環境に応じて適切な方法を選択することが重要です。

超音波による軸力測定

超音波による軸力測定では、ボルトの端面から超音波を入射し、締付け前後における超音波の伝搬時間の変化を測定します。ボルトの伸びや応力によって超音波伝搬時間が変化する性質を利用し、あらかじめ設定した校正条件などに基づいて軸力を推定します。測定精度にはボルト材質、形状、温度なども影響するため、適切な校正や温度補正が重要です。

ひずみゲージを使った軸力測定

ボルトにひずみゲージ(ストレインゲージ)を取り付け、締付けによって生じる軸方向ひずみを測定し、校正値や材料特性などから軸力を求める方法です。

軸力計を使った測定

軸力計とは、ボルト締結時に発生する軸方向荷重を測定するための測定機器です。この装置はボルト締結の品質や信頼性を確保するうえで極めて重要な役割を果たしており、特にトルクだけでは締付けの正確性を保証できない場合に用いられます。

締付け試験に使用される据置型の軸力計では模擬締結部、荷重検出部、表示・記録部などで構成されるものがあります。まず模擬締結体は実際の構造体と似た環境でボルトを締め付けることができるよう設計された治具です。この中にボルトを挿入し、ナットで締め付けると、軸方向に引張力が発生します。

一般的な荷重検出には、ひずみゲージ式ロードセルや油圧式など、用途に応じた方式が使用されます。また、表示ユニットには、リアルタイムで軸力を表示する機能や、記録・データ転送機能を持つものもあり、締付け条件の検証や工具性能の評価に用いられています。

油圧式軸力計

油圧式軸力計

軸力計の利点は、トルクから軸力を推定するのではなく、試験装置内で発生する軸方向荷重を直接測定できる点にあります。たとえば、潤滑剤の有無やネジ部・座面の状態によって軸力がどれだけ変動するかを実測できるため、設計の信頼性向上にもつながります。また、こうした測定結果は必要な締付けトルクを設定する際の基準データとしても活用されます。

ただし据置型の軸力計やロードセル式試験装置は、主に試験・研究・締付け条件の検証などに使用されます。据置型の試験装置は、実機に組み込んだ状態での測定よりも、締付け条件を一定にして比較・評価しやすいため、製品設計、工具性能の確認、締付け条件の検証などに利用されています。

適正な軸力はどのように決める?

適正な軸力は、ボルト径や強度区分だけで一律に決まるものではありません。締結部に作用する外力、被締結部材の材質、使用温度、ガスケットの有無、必要なすべり抵抗や気密性などを考慮して設定します。また、トルク法でその軸力を導入する場合には、ねじ部や座面の摩擦条件による軸力のばらつきも考慮する必要があります。一方、過大な軸力はボルトの降伏やねじ部、被締結部材の損傷を招く可能性があります。そのため、実際の締付け軸力を決定する際は、本記事の参考値だけで判断せず、適用規格、設計図書、ボルトメーカーや設備メーカーが指定する値を優先してください。

軸力についてよくある質問

軸力とは簡単にいうと何ですか?

軸力とは、ボルトを締め付けたときにボルトの軸方向に発生する力です。ボルトを締め付けるとボルトがわずかに伸び、その反作用によって締結する部材同士を強く押さえつけます。ボルト締結では単にボルトを回すことではなく、適切な軸力を発生させて締結部を安定して保持することが重要です。

軸力とトルクの違いは何ですか?

ボルト締結では、締付けトルクを与えることで軸力を発生させます。ただし、締付けトルクの多くはねじ面や座面の摩擦に関係するため、潤滑状態や表面処理などによって、同じ締付けトルクでも得られる軸力は変化します。

ボルトの軸力はどのように計算しますか?

締付けトルクから軸力を簡易的に求める場合、一般に次の関係式が使用されます。

T=K×d×F

  • T:締付けトルク
  • K:トルク係数
  • d:ボルトの呼び径
  • F:軸力

したがって、軸力Fは F=T÷(K×d) で求められます。ただし、トルク係数Kは潤滑状態、表面処理、ねじ部や座面の摩擦状態などによって変化します。そのため、この計算で求められる軸力は設定したトルク係数を前提とした推定値であり、実際の軸力と完全に一致するとは限りません。

ボルトの軸力はどのように測定しますか?

ボルトの軸力を測定する方法には、ロードセルを使用する方法、超音波の伝搬時間の変化から軸力を推定する方法、ボルトの伸び量から軸力を求める方法などがあります。締付けトルクから軸力を推定する方法もありますが、摩擦の影響を受けるため、軸力そのものを直接測定しているわけではありません。高い締結精度が求められる場合は、用途やボルトの構造に応じて適切な軸力測定方法を選択することが重要です。

軸力が高すぎるとどうなりますか?

ボルトの軸力が高すぎると、ボルトに過大な引張応力が発生し、塑性変形(永久伸び)や破断につながる可能性があります。また、ねじ山の損傷や締結部材の変形・損傷を引き起こす場合もあります。一方、軸力が低すぎても、締結部のすべりや緩み、疲労破壊などの原因になります。そのため、ボルト締結では、ボルトの強度や締結条件に応じた適切な範囲の軸力を確保することが重要です。

※本記事に掲載している計算例・数値は一般的な理解のための参考値です。実際の締付け条件は、適用規格、設計図書およびメーカー指定値をご確認ください。

この記事を書いた人

ユネックス合同会社編集部は、産業用ボルト締結工具メーカー「HYTORC(ハイトーク)」の日本法人であるユネックス合同会社が運営する技術情報メディア「ハイトークナビ」の編集部です。トルクレンチ、トルク管理、ボルト締結、軸力、ねじ・ボルト・ナットなど、締結作業に関する情報を中心に発信しています。

ユネックス合同会社は、油圧・電動・空圧式のボルト締結工具の販売・レンタルや、ボルト関連製品を取り扱っています。編集部では、HYTORCの製品・技術資料や取扱説明書に加え、JIS・ISO等の規格、公的機関・業界団体の資料なども確認し、技術的な正確性を重視して記事を制作しています。専門的な内容をできるだけ分かりやすく整理し、ボルト締結やトルク管理に携わる方の課題解決に役立つ情報を提供することを目的としています。