摩擦係数とは?ボルト締結への影響

ボルト締結における摩擦係数とはボルトやナットを締め付ける際に発生する「滑りにくさ」の指標であり、締付トルクがどのように軸力(締結力)へ変換されるかを左右する非常に重要な要素です。

ボルトを締める時の摩擦は主に2つの場所で発生します。ひとつは「ねじ山同士がこすれ合う部分」、もうひとつは「ナットの座面やワッシャーが接触する部分」です。この2つの摩擦によって回転が妨げられるため、締め付けたトルクの多くはここで消費され、実際にボルトを引き伸ばす力として使われるのは一部に限られます。

摩擦係数で変わる軸力|ボルト締結の安定性を左右する要因とは

一般的に締付トルクの内訳は「約90%が摩擦損失、残りの約10%が軸力の発生」に使われると言われています。このため、摩擦係数がわずかに変化するだけでも、最終的に得られる軸力は大きく変動します。例えば、同じトルクで締め付けたとしても、摩擦係数が高ければ滑りにくくなる分、ボルトはあまり伸びず軸力は低くなります。逆に摩擦係数が低い場合は滑りやすくなり、より大きくボルトが引き伸ばされるため、軸力は高くなります。つまり、摩擦係数は締結力の安定性と再現性を左右する鍵となります。

摩擦係数は一定ではなく、さまざまな要因によって変化します。代表的なものとしては、ボルトやナットの表面状態(黒皮、メッキ、酸化皮膜など)、潤滑の有無(オイル、グリス、ドライ状態)、材質、表面粗さ、さらには繰り返し使用による摩耗などが挙げられます。たとえば、潤滑剤を使用すると摩擦係数は低下し、同じトルクでも過大な軸力が発生する可能性があります。一方で乾燥状態や錆びた状態では摩擦係数が高くなり、十分な軸力が得られないリスクが高まります。

このようなばらつきを抑えるために高力ボルトなどの重要な締結では摩擦係数を一定範囲に管理することが求められます。建築や橋梁分野で使用される高力ボルトではあらかじめ表面処理や潤滑状態を管理することで摩擦係数を規定範囲に収め、トルクと軸力の関係を安定させています。また、トルク法だけでなく、回転角法や軸力直接測定法など、摩擦の影響を受けにくい締付管理手法が採用されることもあります。

ボルト締結において摩擦係数を正しく理解することは、単に理論的な話ではなく、実際の安全性や品質に直結する重要なポイントです。見た目には同じ締め付けでも、摩擦条件が異なれば締結力は大きく変わるため、安定した締結を実現するには摩擦係数を前提とした適切な管理と施工が不可欠です。

摩擦係数の求め方(ボルト締結の場合)

ボルト締結における摩擦係数は直接その値を測るというよりも、「締付トルク」と「実際に発生した軸力」の関係から求めるのが一般的です。つまり、ボルトをどれだけのトルクで締めたかと、その結果どれだけ引き伸ばされたか(軸力)を測定し、そこから逆算して摩擦の影響を算出します。

基本的な考え方は締付トルクが「ねじ部の摩擦」「座面の摩擦」「ボルトを引き伸ばす力(軸力)」の3つに分かれるというものです。この関係は実務では次のような簡略式で表されます。

T=KFd (Tは締付トルク、Fは軸力、dはボルト径、Kはトルク係数)

ここでTは締付トルク、Fは軸力、dはボルト径、Kはトルク係数(摩擦の影響をまとめた値)です。このKの中にねじ部と座面の摩擦係数の影響が含まれています。つまり、トルクと軸力が分かればKを求めることができ、そこから摩擦の状態を評価することができます。実際の現場や試験ではロードセル(軸力測定器)を使ってボルトの軸力を測定しながらトルクを加え、この式に当てはめてトルク係数Kを算出します。その値をもとに、「摩擦が高いのか低いのか」「締結条件が安定しているか」を判断します。

ボルト締結における摩擦係数の単位

ボルト締結ではねじ部および座面で摩擦が発生します。これらの摩擦の影響は、締付トルクと軸力の関係を表す「トルク係数(K)」としてまとめて扱われます。一般的に0.15や0.20といった値はこのトルク係数を示しており、無次元量です。

ただし、単位がないからといって軽視できるものではなく、この数値は締結品質に大きな影響を与えます。摩擦係数が高いとトルクの多くが摩擦で消費され、軸力は低くなります。一方、摩擦係数が低いと少ない抵抗で回転するため、同じトルクでも軸力は高くなります。つまり、この値のわずかな違いが締結力のばらつきや締め過ぎ・締め不足といった問題につながります。

実務では摩擦係数そのものを直接管理するのではなく、その影響を含んだ「トルク係数(K値)」として管理されることが一般的です。したがって、ボルト締結においては、トルク係数が単位を持たない重要な管理値であると理解することが重要です。

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