
高力ボルト(ハイテンションボルト)とは?
高力ボルト(ハイテンションボルト)とは建築鉄骨や橋梁などの鋼構造物に使用される、高い強度を持つボルトです。代表的な高力ボルト摩擦接合では、ボルトを強く締め付けることによって軸力を導入し、接合する部材同士を強く押し付けます。このとき部材間に生じる摩擦力を利用して、荷重を伝達するのが特徴です。そのため、高力ボルトの施工では、ボルトの種類に応じた適切な締付け方法を選び、規定された施工手順に沿って軸力を管理することが重要です。高力六角ボルトをトルクコントロール法で施工する場合は、適切な軸力を導入するためのトルク管理も必要になります。

【参考記事】国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」(PDF)
https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001888816.pdf
次の内容はこの資料で確認できます。
・建築鉄骨における高力ボルト摩擦接合の施工方法
・高力ボルトの標準ボルト張力や締付け施工法
・一次締め、マーキング、本締めの施工手順
・トルシア形高力ボルトおよびJIS形高力ボルトの締付け方法
・締付け後の共回り確認や高力ボルトセットの再使用禁止
高力ボルト(ハイテンションボルト)の締め付けの基本原理
高力ボルト摩擦接合の基本原理は、ボルトを締め付けて弾性的に伸ばし、その際に生じる軸力によって接合部材を強く締め付け、接合面の摩擦力によって荷重を伝達することにあります。ボルトとナットを締め付けると、ボルトは軸方向にわずかに弾性伸びし、ボルトには引張軸力が生じます。この軸力によって、接合される鋼材同士は強く押し付けられ、接触面に大きな面圧が発生します。その結果、部材間には高い摩擦力が生まれ、この摩擦力によって、設計上想定された荷重範囲で接合面のすべりを防ぎ、部材間で荷重を伝達します。こうした仕組みが、高力ボルト摩擦接合の基本原理です。

つまり、高力ボルト摩擦接合は、導入された軸力によって接合面に生じる摩擦力を利用して荷重を伝達する点が特徴です。そのため、適切な締め付けによって十分な軸力を確保することが非常に重要になります。締め付けが不足すると摩擦力が足りず滑りが発生し、逆に締め過ぎるとボルトが塑性変形や破断に至る可能性があります。このように、高力ボルトの締め付けは単なる固定作業ではなく、軸力・面圧・摩擦力のバランスによって成立する、非常に合理的かつ重要な接合原理に基づいています。この点も高力ボルト(ハイテンションボルト)の大きな特長です。
【参考記事】国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
7章 鉄骨工事 4節 高力ボルト接合
https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001888816.pdf
高力ボルト(ハイテンションボルト)の共回りによる締結不良と対処法
高力ボルトが共回りを起こすと、所定のボルト張力(軸力)を確保できないおそれがあり、接合性能に影響を及ぼす可能性があります。共回りとは、高力ボルトの本締め時に、ナットとボルト、またはナットと座金など、本来相対的に回転すべき部分が一緒に回転してしまう状態です。その結果、所定のボルト張力(軸力)が導入できず、部材同士を押し付ける力が不足して、接合部のすべり耐力が低下するおそれがあります。特に高力ボルト(ハイテンションボルト)の施工では注意が必要です。
共回りが発生すると、所定の締付け状態に達しているかを正しく判断できず、規定の導入軸力を確保できないおそれがあります。このような理由から、共回りが発生した高力ボルト(ハイテンションボルト)は原則として再使用せず、新品に交換するのが基本です。共回りが確認された場合は、規定された導入軸力が確保されていないと判断されるため、当該高力ボルトセットを新しいものに交換して再施工します。
そのため、共回りが確認された場合は当該ボルトを取り外し、新品に交換したうえで適切に再施工することが、安全性と品質を確保するうえで極めて重要です。こうした対応も高力ボルト(ハイテンションボルト)施工において不可欠です。
- 共回りが発生すると、規定の導入軸力が得られないおそれがある
- 一度使用した高力ボルトのセットは再使用しない
- 共回りが確認された高力ボルトは、新しいセットに交換して再施工する

【参考記事】一般社団法人 日本建設業連合会:高力ボルト接合 共回り(PDF)
https://www.nikkenren.com/kenchiku/sekou/steel_frame_Q%26A/B-2-10.pdf
次の内容はこのPDFで直接裏付けられます。
・共回りが発生すると、規定の軸力を確保できない
・トルシア形高力ボルトやトルクコントロール法ではトルク係数値が不安定になる
・ナット回転法では所定のナット回転角が与えられず、導入軸力がばらつく
・共回りが確認された高力ボルトは、新品に交換する
高力ボルト(ハイテンションボルト)の種類について
高力ボルトには規格、形状、表面処理などによっていくつかの種類があり、代表的なものとして「JIS形高力六角ボルト」「トルシア形高力ボルト」「溶融亜鉛めっき高力ボルト」などがあります。それぞれ締付け方法や施工上の注意点が異なるため、設計図書や仕様に応じて適切なものを選定することが重要です。
高力六角ボルト(JIS形・F10Tなど)

JIS B 1186に規定される代表的な高力六角ボルトで、ボルト・ナット・座金をセットで使用します。高力ボルト摩擦接合では、所定のボルト張力を導入して接合面の摩擦力によって荷重を伝達します。本締め方法は、使用する高力ボルトの種類や適用する施工基準によって異なります。JIS形高力ボルトでは、適用する仕様に応じてトルクコントロール法やナット回転法などが用いられます。トルクコントロール法では、締付けトルクと導入軸力の関係がボルトセットのトルク係数値の影響を受けるため、施工前の確認や締付け機器の適切な管理が重要です。
F10Tは、高力六角ボルトの機械的性質による等級の一つです。JIS B 1186では、F10Tのボルト試験片について引張強さ1,000~1,200 N/mm²、耐力900 N/mm²以上などの機械的性質が規定されています。建築鉄骨や橋梁などの摩擦接合に広く用いられています。
トルシア形高力ボルト(TCボルト)

鉄骨工事で広く使用される高力ボルトで、ボルト先端に「ピンテール」と呼ばれる部分が設けられています。専用レンチでナットを締め付けると、所定の締付け状態で破断溝に規定のトルクが作用し、ピンテールが破断します。ピンテールの破断トルクやボルトセットの特性を管理することで、適正なボルト張力を導入できるよう設計されています。また、ピンテールの破断を目視で確認できるため、締付け完了を確認しやすいことも特徴です。
溶融亜鉛めっき高力ボルト

溶融亜鉛めっき高力ボルトは、防食性を高めるために溶融亜鉛めっきを施した高力ボルトです。建築分野で使用される一般的な溶融亜鉛めっき高力ボルトではF8Tが用いられます。めっきの影響によってトルク係数値が安定しにくいため、本締めには一般にナット回転法が採用されます。また、高力ボルト摩擦接合では接合面のすべり性能も重要なため、ブラスト処理やりん酸塩処理など、仕様に応じた摩擦面処理を行います。
【参考記事】神戸製鋼グループ技術資料
高力ボルトに関する技術資料
https://kobelco-bolt.com/wp-content/themes/kobelco/assets/images/products/034-038.pdf
高力ボルト(ハイテンションボルト)サイズ規格表
高力ボルトには用途や規格によってさまざまなサイズがあります。JIS B 1186で規定される摩擦接合用高力六角ボルトには、M12、M16、M20、M22、M24、M27、M30があります。これを超える呼び径の高力ボルトについては、個別の規格や仕様に基づく製品もあるため、設計図書やメーカー仕様を確認する必要があります。
| 呼び径 | ピッチ(mm) | 高力六角ボルト・ナットの二面幅(mm) |
|---|---|---|
| M12 | 1.75 | 22 |
| M16 | 2.0 | 27 |
| M20 | 2.5 | 32 |
| M22 | 2.5 | 36 |
| M24 | 3.0 | 41 |
| M27 | 3.0 | 46 |
| M30 | 3.5 | 50 |
※上表はJIS B 1186の寸法をもとに整理した参考情報です。実際の施工では、最新の規格、設計図書および使用するボルトメーカーの仕様を確認してください。
高力ボルトの締め付け手順
高力ボルト摩擦接合では、本接合に先立って仮ボルトを用いて接合部材を組み立て、板同士を十分に密着させます。その後、所定の高力ボルトを取り付け、「一次締め → マーキング → 本締め」の順に施工します。1群のボルトは、一般に中央部から周辺へ向かって締め付けます。
次に「一次締め」を行います。一次締めは、接合部を十分に密着させ、本締めを適切に行うための工程です。一次締め後には、ボルト・ナット・座金・母材にまたがるようにマーキングを行います。
最後に本締めを行います。本締め方法は高力ボルトの種類によって異なります。トルシア形高力ボルトでは専用レンチを用いてピンテールが破断するまで締め付け、JIS形高力ボルトではトルクコントロール法またはナット回転法によって所定のボルト張力を導入します。

なぜ段階的に締めるのか

高力ボルトは一気に強く締めるのではなく、段階的に締めることが基本です。もし最初から一本だけ強く締めてしまうと、その部分だけに力が集中し、他のボルトとのバランスが崩れてしまいます。その結果、接合面に隙間ができたり、十分な摩擦力が得られなくなる可能性があります。また、「共回り」にも注意が必要です。共回りとは、ナットとボルト、またはナットと座金など、本来相対的に回転すべき部分が一緒に回転する現象です。共回りが発生すると、所定のボルト張力(軸力)を確保できないおそれがあります。一次締め後に施したマーキングによってボルト・ナット・座金の回転状態を確認し、共回りが発生していないことを確認することが重要です。
高力ボルトの呼び径や必要な締付け能力は、適用する規格や設計条件によって異なります。JIS B 1186に規定される摩擦接合用高力六角ボルトの呼び径はM12~M30です。実際の施工では、ボルト径、施工方法、必要なボルト張力などに対応した適切な締付け機器を選定する必要があります。適切な締付け機器の選定は施工品質を確保するうえでも重要です。
