大型ボルトを緩める作業は多くの現場でハンマーを使用して緩めるケースが存在します。というのもインパクトレンチなどでは歯が立たず、緩める事ができないためです。ただ、ハンマーでボルトを緩める作業は非常に大変で適切な方法を取らなければ効率が悪く、怪我や設備の損傷のリスクも無視できません。以下に、ハンマーを使用する際の困難さやリスク、そしてどのような状況でそれが必要になるかを説明します。ただし、結論として現在、ハンマーはあくまで補助的な方法であり、主な緩め工具として使うのは非効率的でリスクが高いといえます。
1. ハンマーでボルトを緩める理由
- ボルトが固着している場合:錆びついている、または長期間締め付けられていたボルトが固着して緩まない場合。
- 適切な工具が手元にない場合:現場や状況によって、油圧トルクレンチやインパクトレンチが利用できない場合。
- 振動を与えて固着を緩和したい場合:ハンマーの振動を利用して、固着部分を緩める。
ハンマーでボルトを緩める困難さ
巨大ボルトは締め付け時に高いトルクがかかっています。対象となるボルトを緩めようと思えばそのトルクを超える力を加えなければ緩みません。そのため短時間のハンマー作業だけで十分なトルクを生み出すのは難しいため大量のエネルギーと繰り返し作業が必要です。この繰り返し作業が非常に過酷であり1回のハンマーの衝撃では緩まないことがほとんどなため、何度も何度もハンマーで叩く必要があります。これにより、作業が非常に疲れる上、ボルトや周囲の部材を傷める可能性があります。
また、ハンマーでの衝撃は力の方向を正確に制御するのが難しいため、ボルトに均一に負荷をかけることが困難です。結果として、ボルトのねじ山やナットを傷めるリスクがあります。さらに作業者への負担やリスクも相当なものがあります。大型のハンマーを使用する場合、長時間の作業で腕や肩に大きな負担がかかるばかりかハンマーの反動や滑りによる事故(指を叩く、バランスを崩すなど)のリスクも高まります。
3. ハンマーを使用する際のリスク
ハンマーでボルトを緩める場合のリスクがいくつかあります。ひとつはボルトやナットの損傷です。強い衝撃により、ボルトのねじ山が潰れたり、ナットが変形することがあります。損傷したボルトは再利用できない場合が多く、交換作業が必要になります。ボルトやナットは大型になればなるほど価格は高額になり高いボルトになると数万円以上するボルトも少なくありません。また、周囲の設備や構造物への影響も無視で来ません。
ハンマーの衝撃がボルトだけでなく周囲の部材に伝わり、ひび割れや変形を引き起こす可能性があります。中でも最大のリスクは作業者の安全と言えます。ハンマーでボルトを緩め続けていると体力を消耗します。その体力が消耗しきったタイミングでハンマーが滑る、反動でバランスを崩すなどの事故が発生しやすくなります。また、作業中の振動が手首や腕に負担をかけ、疲労や関節痛の原因になります。
以上のことからハンマーで大型ボルトを緩める作業は非常に過酷でリスクが高い方法です。必要な力を生み出しにくいですし、作業者やボルト、周囲の設備に損傷を与える可能性もあります。そのため、ハンマーは補助的な方法として使用するのが妥当な選択といえます。大型ボルト本格的な緩め作業には油圧トルクレンチを使用するなど専門的な工具を使用することを強く推奨します。大型のボルトになってくるとインパクトレンチでは太刀打ちできません。
どうしてもハンマーを使用しないといけない場合は例えば適切な工具が利用できない緊急時や油圧トルクレンチやインパクトレンチがない場合の一時的な固着を緩和する補助作業としてぐらいが無難でしょう。
大型ボルトを緩める場合の最適な選択肢とは?
大型ボルトを緩める際に油圧トルクレンチは多くの状況で最適な選択肢となります。ただし、作業の環境や条件によって他の工具の方が適している場合もあります。油圧トルクレンチが適切な理由、適している条件、そして他の選択肢と比較した際のポイントを説明します。
大型ボルト(例:M50、M100など)は締め付けトルクが数万Nmに達する場合があります。これを緩めるには同等またはそれ以上のトルクが必要です。油圧トルクレンチは油圧ポンプを使用して高いトルク(数万Nm以上)を安定して発生させることが可能です。手動工具(ブレーカーバー)や一般的なエアーインパクトレンチでは、これほどのトルクを発生させることが難しく、作業効率や安全性に問題が生じます。また油圧トルクレンチは固着したボルトを緩める事も多くの場合可能です。さらに大型ボルトで固着が激しい場合には潤滑剤や高周波ボルトヒーターを使用して固着を緩和した後、油圧トルクレンチで確実に緩める手法が効果的です。現場によっては高周波ボルトヒーターが適切なケースもありますのでまずは当社にご相談下さい。
油圧トルクレンチの作業効率
油圧トルクレンチは高いトルクを短時間で発生させることができるために作業効率が大幅に向上します。緩め作業に何時間もかかっていた案件が油圧トルクレンチを使用した事で今までの20%の時間で完了したケースもあります。また油圧トルクレンチは連続作業でも安定した性能を発揮します。
さらに油圧トルクレンチは作業者の怪我のリスクを大幅に低減します。具体的には油圧トルクレンチは反力受けを用いてボルトを緩めるためにトルクを発生させる際の反動が作業者に伝わりません。また、手動工具では、作業者が全力で力をかける必要がありますが油圧トルクレンチでは機械がほとんどの作業を行います。これにより、体力的な負担が大幅に軽減されます。油圧トルクレンチは耐久性が高く、長期間使用できる設計がされています。これにより、初期投資は高いですが長期的にはコストパフォーマンスが高いです。ボルトの緩め作業で何らかの課題があるお客様は当社までお気軽にご相談下さい。