
コードレス電動トルクレンチでのボルト締結作業
ポルシェのセンターロックホイールは通常の5穴ホイールと異なり、中央に1本のロックナットを使用してセンターロックホイールを固定するシステムです。センターロックホイールは主に911 GT3、GT2、ターボSなどの高性能モデルに採用されており、レース車両の技術をフィードバックしたものです。センターロックホイールの交換作業には専用の工具と適切な手順が必要となるため、慎重に行うことが重要です。
センターロックホイールとは

ポルシェのセンターロックホイール
センターロックホイールとはホイールを車両に取り付ける際に通常のように複数のボルトやナットを使用するのではなく、中央の大きなナット一つだけで固定するホイールのことを指します。一般的な自動車では4本から5本のホイールナットやボルトを使ってホイールを固定しますが、センターロック方式ではホイールの中央にある専用のロック機構を締めるだけで取り付けが完了します。
この方式は特にレースカーや高性能スポーツカーで採用されており、ホイールの着脱を素早く行えるという大きなメリットがあります。センターロックホイールの最大の利点はタイヤ交換の時間を大幅に短縮できることです。通常のホイールナット方式では、複数のナットを1本ずつ外して再び締め直す必要がありますが、センターロック方式では1つのナットを緩めるだけでホイールを外すことができます。
しかしセンターロックホイールにはいくつかのデメリットも存在します。そのひとつが専用の工具が必要であることです。通常のホイールナットは一般のトルクレンチでも締め付けられますがセンターロックナットは特殊な締め付け手順と500Nm以上の高トルクで締める必要があるため、専用の大型トルクレンチが必要になります。また、ナットが万が一緩んでしまうとホイールが脱落するリスクがあるため、安全性を確保するためのロック機構が備わっているものの、定期的な点検が不可欠です。さらに、センターロックホイールのシステムは製造コストが高いため、一般的な市販車ではほとんど採用されておらず、主にスーパーカーやレーシングカーに限定されています。

ポルシェ911 GT3のセンターロックホイール
ポルシェのセンターロックホイール交換の高い難易度
ポルシェのセンターロックホイールの交換作業は従来のホイール交換と比較して難易度が高いとされています。通常の車のタイヤ交換をする際は複数個のボルトナットを緩めてトルク管理を行えばよく締め付けトルクも100Nm-200Nmの間で締結できます。
しかしセンターロックホイールは中央に1個あるボルトナットを締結する必要があり500Nmを超えるトルク管理が求められます。しかも普通にトルク管理をおこなえばよいという作業手順ではありません。トルク→一定角度ゆるめる→再トルクをおこなう必要があります。以下に、その難しさの要点を挙げます。
1. 専用工具が必要
センターロックホイールの交換には特殊なトルクレンチとロックレンチが必要です。さらに1つの大きなナットでホイールを固定する仕組みで、高いトルクで締め付けられています。通常のホイール交換工具では対応できないため、専用のツールが不可欠です。
2. 高トルクの締め付け作業
センターロックホイールの締め付けには高いトルク(500Nm以上)が必要で、一般的なメカニックでは再現が難しいです。適切なトルクで締めないと、安全性や走行性能に大きな影響が出る可能性があるため、プロフェッショナルな設備と技術が求められます。
3. 正確なトルク管理
トルクの管理が非常に重要です。ナットを正確なトルクで締めることが、安全な走行に必要です。不適切なトルクでの締め付けは、走行中のホイール脱落やナットの緩みにつながる危険性があり、事故の原因にもなります。作業後100kmほど走行した後に、再度トルクを確認することが推奨されます。
4. 温度による影響
ポルシェなど高性能車では、ブレーキの熱でホイールやセンターロック機構が非常に高温になることがあり、この影響で締め付けトルクが変動する可能性があります。交換時には冷却後の作業が推奨されるため、時間がかかることがあります。
5. 専門知識が必要
センターロックホイールは通常のホイールシステムと異なり、構造や仕組みが特殊なため、正確な作業手順やトルク管理に関する専門的な知識が必要です。自分で作業を行う場合には誤った取り扱いが故障や事故の原因になる可能性があります。ポルシェのセンターロックホイールは通常のメンテナンス作業よりも高度な技術と知識を要求します。そのため、正確かつ安全に作業を行うには、専門のポルシェディーラーや整備工場に依頼するのが推奨されます。
このようにポルシェのセンターロックホイールの交換は難易度が高く、適切なツールと知識が必要な作業であるため、一般的なユーザーが行うのはリスクが高いと言えます。
ポルシェのセンターロックホイール交換作業向け工具
HYTORCの電動トルクツールはセンターロックホイールの交換ツールとしては究極のものです。付属の反力受けによりこの電動トルクツールはセンターロックホイールナットを緩めて締めるときにブレーキペダルをロックする必要がなくなります。車内で追加の手助けや工具を使わずにセンターロックホイールを交換できるようになります。これによってイベントに持参する必要のあるツールの量、今まで費やしていた労力のレベルが大幅に改善されるでしょう。4つのホイール交換プロセス全体の所要時間は約10分で周囲のトルク値が正確かつ安全であることに疑いの余地なく、1人で簡単に完了できます。
このツールの優れている点はホイールのナットを締めすぎる危険がないことと600Nmのセンターロックを簡単に取り外せることです。電動トルクガンはポルシェ用にプログラムされているため、例えば600Nmまで締め付け、60度戻し、その後600Nmに戻すという、ホイールの取り付けと取り外しのプロセスが行われます。それらは非常に効率的です。これを別の車種や目的に使用する場合は、適切な仕様でプログラムする必要があります。
さて、ナットを破壊するトルクを持つインパクトレンチを使用してホイールを取り外すことができないのかと考えている人もいるかもしれません。インパクトレンチを使用する場合の問題は締め付け精度が低く、センターロックホイールを損傷する可能性があることです。動画をご覧になればわかる通り、この電動工具はほぼ無振動ですからセンターロックホイールを傷つけるリスクはほぼありません。またここでの重要な点はトルクの制御です。これにより、ポルシェが指定した指定トルクに達しない可能性が排除されます。