タワークレーンの工法や組立解体工程を簡単に解説

タワークレーン

タワークレーン

タワークレーンは高層ビルや橋梁、プラント施設などの大規模な建設現場で使用される巨大なクレーンのことです。タワークレーンは垂直にそびえ立つ構造を持ち、高所での資材運搬や組立作業に不可欠な建設機械です。地上からの高さがあるため、建設現場の省スペース化にも貢献し、狭い都市部での工事にも適しています。タワークレーンは高層ビルや大規模なインフラ工事において不可欠な設備であり、その組立と分解には慎重な計画と高度な技術が求められます。タワークレーンは特に限られた時間とスペースの中で作業を行うためには効率的な手法を採用することが重要となります。

日本国内タワークレーンメーカー

日本国内でタワークレーンのメーカーは多くありません。その理由は建設業界におけるこの製品の需要の特殊性と、製造・運用に必要とされる高度な専門性に起因しています。

タワークレーンはその利用が限定的な製品です。主に高層ビルや超高層マンションなどの大型建築物に使われますが日本国内でそのようなプロジェクトは年間を通じてさほど多くありません。とくにジブクライミングクレーンなどの自昇式モデルは、さらに特殊な場面に限定されており、需要の母数が非常に少ないため、多くのメーカーが参入しても採算が取れにくいという構造的な制約があります。

タワークレーンの製造には高度な技術が要求されます。クレーン本体の構造設計に加えて、風や地震などの外的荷重に耐えるための構造解析、電気制御、安全装置、油圧機構の設計まで、さまざまな工学分野の知見が必要です。さらに現地での組立・解体作業や、建物との干渉を避ける施工計画にも深い専門性が求められます。こうした複合的な技術の蓄積がなければ、製品として成立させることすら困難です。

タワークレーンのクライミング方法

タワークレーンのクライミング方法とは建物の建設の進行に合わせてクレーン自体を高く昇らせていくための技術であり、特に高層建築において不可欠な機構です。建設物の高さが増すにつれて、資材の荷揚げも上層階に対応する必要があるため、タワークレーンは地上に据え付けたままでは対応できません。そこで「クライミング」と呼ばれる方法で、クレーンを段階的に上昇させ、工事の進行に追随させる仕組みが用いられます。クライミング方法は2つ存在します。

フロアクライミング

フロアクライミング

フロアクライミング

フロアクライミングとは高層ビルなどの建設現場で使用されるタワークレーンの昇降方式のひとつで、建物の内部構造、たとえばエレベーターシャフトや階段室といった躯体の内部にクレーンを設置し、その内部空間を利用して段階的に上階へとクレーン自体を押し上げていく仕組みです。この方式では建物の進捗に合わせて、タワークレーンを1階ごとに上昇させることができるため、地上から大掛かりなマストを建てて上に伸ばすような他の方式とは異なり、非常にコンパクトかつ効率的に作業を進めることが可能となります。

フロアクライミング方式においてはタワークレーンはまず低層階の床スラブ上に設置されます。その床にはあらかじめタワークレーンを支えるための強固なアンカーや支持フレームが組み込まれており、タワークレーンはこれにしっかりと固定されます。上の階の構造が完成するたびに、クレーン本体を油圧ジャッキなどの昇降装置によって持ち上げ、新たに完成した階に設けられた支持部へと移動させて再固定します。この作業を繰り返すことで、建物の進行に追従するようにタワークレーンも上昇していきます。

この方式の大きな特徴は、タワークレーンが建物の内部にあるため、風の影響を受けにくい点にあります。高層建築では、風速が高まる上層部での作業安全が大きな課題となりますが、フロアクライミング方式であれば構造体の内側でクレーンが機能するため、風による揺れや操作制限を最小限に抑えることができます。また、建物の外周にマストを張り出す必要がないため、敷地条件が厳しい都市部の現場においても、スペースを有効活用しながら安全に施工が進められるという利点もあります。

ただし、この方式には慎重な設計と工程管理が求められます。クレーンの設置位置には構造的な強度が必要であり、上階への移設にも高精度な作業が必要となるため、あらかじめ計画段階からフロアクライミングを前提にした構造設計や工法選定が行われることが一般的です。また、工事完了後にはクレーンを再び建物内部から解体・搬出する必要があるため、撤去計画も含めた全体スケジュールの管理も重要な要素となります。

このようにフロアクライミングは、構造内部を活用する独自の方式でありながら、高層建築や都市部の限られた敷地条件に適応できる優れた昇降方法として、多くの現場で採用されています。

マストクライミング

 

マストクライミング

マストクライミング

マストクライミングとは、高層建築の現場で使用されるタワークレーンの昇降方式のひとつであり、クレーンを建物の外側に沿って自ら上昇させていく方法です。この方式では、クレーンの基部を地上に固定したうえで、垂直に立ち上げられたマスト(支柱)をクレーン自体が自分の力で少しずつ登っていく仕組みとなっており、一般的に「ジブクライミングクレーン」や「セルフクライミングクレーン」と呼ばれるタイプがこれに該当します。

最初に、クレーンは建物の基礎近くに設置され、基部から伸びたマスト(塔状の鉄骨構造)に沿って組み立てられます。建設工事が進むにつれて、より高所での作業が必要になるため、クレーンも高くなる必要があります。このとき、クレーン本体は「クライミング装置」と呼ばれる機構を使って、自らの下部に新しいマストセクションを追加しながら、段階的に上昇していきます。具体的には、クレーンの本体部分とマストの間に油圧ジャッキを設置し、それを上下させることで空間を作り、そこに新たなマストセクションを挿入して接続していくという手順です。この作業を繰り返すことで、クレーンは自力でどんどん上に登っていくことができるのです。

マストクライミングの大きな特徴は建物外部の空間を活用するため、構造体の内側に干渉することがない点です。これにより建物内部の工事とタワークレーンの昇降作業が並行して進められ、全体の工期を短縮しやすくなります。また、地上からマストを垂直に伸ばしていくため、非常に高い位置での作業にも対応可能で、超高層ビルの建設においても有効な工法です。

ただし、マストクライミング方式にはいくつかの注意点もあります。まず、クレーンが外部に露出しているため、風の影響を強く受けやすく、特に高層部では風速によって作業が制限されることがあります。また、クレーンを安定して支えるためには、一定間隔で建物とマストを「壁つなぎ」と呼ばれる支持構造で固定する必要があります。これにより、マストが横風などで揺れたり傾いたりすることを防いでいますが、この壁つなぎの設置と撤去も手間のかかる工程のひとつです。

マストクライミング

マストクライミング

このように、マストクライミングは、建物の外側を使って効率的にクレーンを上昇させるための実用的かつ高度な技術であり、特に高層建築や工期短縮が求められる都市部の大型プロジェクトなどで多く採用されています。その一方で、風の影響や支持構造の設計、解体計画など、事前の綿密な準備と高度な施工管理が必要とされる工法でもあります。

組立分解作業

タワークレーン分解

タワークレーン分解

事前に現場の地盤調査、レイアウト計画、安全計画、そしてクレーンの仕様選定が行われます。基礎部分の設計・施工もこの段階で完了しておく必要があります。マストを支えるためのコンクリート基礎やベースフレームがあらかじめ構築されていることが前提です。タワークレーンのアンカーボルトやマストの接合部のボルトは大型であり通常のトルクレンチでの締結は難しいです。そのため油圧トルクレンチ等を利用するのが理想的な選択になります。

マストは非常に大きな荷重を支える必要があるため

タワークレーンのマスト(塔体)はクレーン上部に取り付けられた回転体、ジブ(アーム)、吊り荷など全体重量数十トンから100トン近くにもなる機材を、常に支えています。この荷重は垂直方向だけでなく、吊荷の移動時には横方向のモーメント(曲げ荷重)やねじりも発生します。したがって、マストセクション同士を接合するボルトは、単なる固定具ではなく、大規模な構造荷重を伝達し、構造の一体性を保つための「主構造部材」とみなされます。このような大きな荷重を安全に伝達するためには、高強度かつ大径のボルトが必要不可欠です。

マストは繰り返し荷重(疲労)に対する強さが求められるため

タワークレーンは、日々の運転の中で、吊荷の揺れ、風の影響、加減速、ジブの回転動作などによって、マストに絶え間なく変動する応力(繰返し荷重・動的荷重)が加わります。小さなボルトを多数使ってしまうと、1本あたりの疲労応力が高くなり、時間の経過とともに疲労破断を起こすリスクがあります。一方、大きなボルトは1本あたりの応力集中を抑えることができ、耐疲労性にも優れるため、長期間にわたる安全な運用を実現できます。

マストの現場での組立・分解作業の回数に耐えるため

タワークレーンは組立解体を繰り返して再利用されることが多く、そのたびにボルトが締め直されます。小さなボルトではねじ山の摩耗や締めすぎによる破損が起こりやすいですが、大きなボルトは耐久性が高く、繰返しの脱着作業に耐えやすいという特長があります。さらに、大径ボルトはトルク管理がしやすく、トルクレンチや油圧トルクレンチによって規定の締付け力(軸力)を高精度で再現可能であるため、安全な締結を繰り返すうえでも有利です。

タワークレーンのアンカーボルトの締結

タワークレーンのアンカーボルトの締結はそのクレーン全体の安定性・安全性を左右する重要な工程のひとつです。タワークレーンは、高さが数十メートルから100メートルに及び、しかも吊荷や風による大きなモーメント(回転力)を受けるため、その基礎部分がしっかりと固定されていなければ、全体が転倒する危険性さえあります。そうした構造的な要請に応えるために、クレーンのベース部には高強度なアンカーボルトが設置され、基礎コンクリートと機械的に連結されます。アンカーボルトはナット対辺80mmを超えるナットが使用される事もあるためセンターホール型油圧トルクレンチを使用する事で効率的なボルト締結作業ができます。

この記事を書いた人

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