
歯付きワッシャーとは
歯付きワッシャーとは内周または外周にギザギザした歯が付いた座金のことです。別名として、歯付座金、菊座金、ロックワッシャー、スターワッシャーと呼ばれることもあります。一般的な平ワッシャーが座面保護や面圧分散を目的に使われるのに対し、歯付きワッシャーは歯が相手部材に食い込むことで、回転抵抗を高めたり、塗装や酸化膜を破って電気的な導通を確保したりする目的で使用されます。ただし、歯付きワッシャーは万能なゆるみ止め部品ではありません。強い振動や衝撃が加わる機械・建設機械・橋梁・プラント設備などでは、軸力を安定して維持できるゆるみ止め対策を別途検討する必要があります。
平ワッシャーの基本的な役割については平ワッシャーの解説記事でも詳しく紹介しています。
歯付きワッシャーの正しい使い方
歯付きワッシャーは基本的にボルト頭またはナットと相手材の間に入れて使用します。歯が相手材に食い込むことで、座面との接触を確保し、回転しにくくしたり、塗装や酸化膜を破って導通を確保したりします。導通目的で使用する場合は、歯が金属面に確実に接触する向きで取り付けることが重要です。

歯付きワッシャーの向き
歯付きワッシャーを取り付ける際は歯が相手材またはボルト頭・ナット座面に確実に食い込む向きで使用します。導通を目的とする場合は、塗装面や酸化膜を破って金属同士が接触しやすくなるように、歯が導通させたい金属面へ当たる向きにすることが重要です。ただし、製品の形状や使用箇所によって適切な向きは異なります。特に皿形や内外歯形などは形状に方向性があるため、使用する規格品やメーカー資料を確認したうえで取り付ける必要があります。
歯付きワッシャーの主な用途
歯付きワッシャーは振動環境でボルトのゆるみを防ぐための部品というよりも、座面への食い込みを利用して導通性や軽微な回転抵抗を得るために使用されることが多い部品です。例えば制御盤やアース接続では、金属表面に塗装や酸化膜があることが多く、そのままボルトを締め付けても金属同士が十分に接触しない場合があります。接触が不十分だと、電気が流れにくくなったり、接触抵抗が不安定になったりすることがあります。そこで歯付きワッシャーを使用すると、ワッシャーの歯が塗装や酸化膜を破りながら金属表面へ食い込みます。その結果、金属同士が直接接触しやすくなり、安定した導通を確保しやすくなります。このため、歯付きワッシャーは現在でも制御盤、配電盤、電装機器、自動車のアース、電気設備などで非常によく使用されています。
| 用途 | 具体例 | 使用目的 |
|---|---|---|
| 電気的導通の確保 | 制御盤、配電盤、アース接続 | 塗装や酸化膜を破り、金属同士を接触させる |
| 軽微な回転防止 | 小型機器、薄板部品 | 歯の食い込みで回転抵抗を高める |
| 座面のすべり抑制 | 金属板、筐体、ブラケット | 座面との引っ掛かりを作る |
| 外観より機能を優先する箇所 | 内部部品、電装部品 | 座面に傷が付いても機能を優先する |
歯付きワッシャーはゆるみ止めになるのか?
結論から言うと、歯付きワッシャーには軽微な回転抵抗を高める効果はありますが、強い振動環境でボルトのゆるみを確実に防ぐ部品とは言えません。歯付きワッシャーは外周や内周にある歯が相手材へ食い込むことで多少の回転抵抗を与える構造です。そのため、軽微な振動や小型機器では「少し回りにくくなる」程度の効果はあります。しかし、ボルト締結で本当に重要なのは「軸力を維持できるかどうか」です。強い振動環境ではボルト・ナット間に微小な滑りが繰り返し発生し、最終的に回転ゆるみが起こります。この現象に対しては、歯付きワッシャーの食い込み程度では十分な効果を発揮できないケースが多く、現在の機械・橋梁・建設・重機分野では主力のゆるみ止めとは見なされていません。
【参考記事】以下資料ではユンカー試験の分類として
「Ineffective securing elements(効果のない緩み止め要素)」の中にToothed washers DIN 6797が明記されています。
7.4.1 Ineffective securing elements
https://www.warburtons.com.au/_files/ugd/68ddff_684e731724934a649d206e6314726bf9.pdf
| 使用環境 | 歯付きワッシャーの効果 |
|---|---|
| 小型機器・軽微な振動 | 回転抵抗を与える可能性がある |
| 制御盤・アース接続 | 導通確保に有効 |
| 強い振動・重機・橋梁 | ゆるみ止めとしては不十分な場合が多い |
| 外観面・塗装面 | 傷が付くため注意が必要 |
歯付きワッシャーの種類について
歯付きワッシャーにはいくつかの種類がありますが、基本的には「どこに歯が付いているか」「どのように食い込ませるか」によって分類されます。代表的なのは「外歯形」と「内歯形」で用途によって使い分けられています。
外歯形(外側に歯があるタイプ)

外歯形はワッシャーの外周部分に歯が付いているタイプです。見た目は太陽のように外側へギザギザが広がっている形をしています。このタイプは歯が外側に大きく張り出しているため、相手材へ比較的強く食い込みやすいのが特徴です。そのため、内歯形よりも回転抵抗を得やすい傾向があります。特に金属板や筐体などへしっかり食い込ませたい場合によく使用されます。
また、歯が外周にあることで接触半径が大きくなるため、比較的小さい締付力でも引っ掛かりを得やすいという特徴があります。一方で、歯が外へ飛び出しているため、見た目が目立ちやすく、狭い場所では周囲へ干渉することがあります。そのため、外観を重視する製品やスペースが限られる場所では注意が必要です。
内歯形(内側に歯があるタイプ)

内歯形はワッシャーの内周側に歯が付いているタイプです。歯がボルト穴の周囲に並んでいる構造になっています。外歯形よりも外周がスッキリしているため、周囲へ飛び出しにくく、狭い場所でも使いやすいのが特徴です。特に電子機器や制御盤などでは、見た目やスペースの制約から内歯形がよく採用されます。
また、ボルト頭やナットの下へ隠れやすいため、外側から歯が見えにくいという特徴もあります。ただし、歯の位置が中心側になるため、外歯形と比較すると食い込みによる回転抵抗はやや小さい傾向があります。
皿形歯付きワッシャー

皿形歯付きワッシャーは皿ばねのような円すい形状を持つ歯付きワッシャーです。締め付け時にワッシャーが押しつぶされることで反発力が生じ、さらに歯が座面に食い込むことで接触抵抗を高めます。平形の歯付きワッシャーよりもばね性を持つ点が特徴ですが、強い振動環境でのゆるみ止め効果を過信しないことが重要です。
内外歯形ワッシャー

内外歯形ワッシャーとは、外周側と内周側の両方に歯が付いた歯付きワッシャーです。外側と内側の歯が座面に食い込むことで、接触抵抗を高め、ナットやボルトの回転を抑える補助的な働きをします。また、歯が塗装膜や酸化膜を破って金属面に接触しやすくするため、導通確保を目的として使用されることもあります。ただし、強い振動環境でのゆるみ止め効果を過信せず、用途に応じて適切な締結部品を選ぶことが重要です。
| 種類 | 歯の位置 | 特徴 | 向いている用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 外歯形 | 外周側 | 歯が外側に広がり、座面へ食い込みやすい | 金属板、筐体、導通目的 | 外観上目立ちやすい |
| 内歯形 | 内周側 | 歯がボルト穴周辺にあり、外側に出にくい | 電子機器、制御盤、小ねじ | 外歯形より食い込み範囲が狭い |
| 内外歯形 | 内周・外周 | 接触点が多い | 導通性を重視する箇所 | 座面を傷つけやすい |
| 皿形 | 皿座面 | 皿ねじに合わせて使う | 皿ねじ、皿座面 | 平座面には適さない場合がある |
歯付きワッシャー使用時の注意
歯付きワッシャーを使う際は「歯をしっかり食い込ませること」が重要です。そのため、締付不足だと歯が十分に接触せず、期待する導通性が得られない場合があります。逆に締め付けすぎると、歯が過度に潰れたり、相手材へ深い傷を付けたりすることがあります。特にアルミや樹脂のような柔らかい材料では注意が必要です。また、歯付きワッシャーは基本的に「座面へ傷を付ける部品」です。そのため、化粧面や外観品質を重視する製品には向かない場合があります。
歯付きワッシャー(外歯形)の規格表・寸法例
| 呼び径 | 内径 d (mm) | 外径 D (mm) | 板厚 t (mm) |
|---|---|---|---|
| M2 | 2.2 | 4.5 | 0.3 |
| M2.5 | 2.7 | 5.0 | 0.4 |
| M3 | 3.2 | 6.0 | 0.4 |
| M4 | 4.3 | 8.0 | 0.5 |
| M5 | 5.3 | 10.0 | 0.6 |
| M6 | 6.4 | 11.0 | 0.7 |
| M8 | 8.4 | 15.0 | 0.8 |
| M10 | 10.5 | 18.0 | 0.9 |
| M12 | 13.0 | 20.5 | 1.0 |
| M14 | 15.0 | 24.0 | 1.0 |
| M16 | 17.0 | 26.0 | 1.2 |
| M18 | 19.0 | 30.0 | 1.2 |
| M20 | 21.0 | 33.0 | 1.4 |
| M22 | 23.0 | 36.0 | 1.5 |
| M24 | 25.0 | 39.0 | 1.6 |
| M27 | 28.0 | 44.0 | 1.8 |
| M30 | 31.0 | 50.0 | 2.0 |
歯付きワッシャー(内歯形)の規格表・寸法例
| 呼び径 | 内径 d (mm) | 外径 D (mm) | 板厚 t (mm) |
|---|---|---|---|
| M3 | 3.2 | 6.0 | 0.4 |
| M4 | 4.3 | 8.0 | 0.5 |
| M5 | 5.3 | 9.0 | 0.6 |
| M6 | 6.4 | 11.0 | 0.7 |
| M8 | 8.4 | 14.0 | 0.8 |
| M10 | 10.5 | 18.0 | 0.9 |
| M12 | 13.0 | 20.0 | 1.0 |
| M14 | 15.0 | 24.0 | 1.0 |
| M16 | 17.0 | 26.0 | 1.2 |
| M18 | 19.0 | 30.0 | 1.2 |
| M20 | 21.0 | 33.0 | 1.4 |
| M22 | 23.0 | 36.0 | 1.5 |
| M24 | 25.0 | 39.0 | 1.6 |
| M27 | 28.0 | 44.0 | 1.8 |
| M30 | 31.0 | 50.0 | 2.0 |
歯付きワッシャーに関するよくある質問
Q. 歯付きワッシャーは何のために使いますか?
A. 主に、座面への食い込みによる回転抵抗の向上や、塗装・酸化膜を破って電気的な導通を確保する目的で使われます。制御盤、配電盤、アース接続、電装部品などで使用されることがあります。
Q. 外歯形と内歯形の違いは何ですか?
A. 外歯形はワッシャーの外周に歯があり、座面へ食い込みやすいのが特徴です。内歯形は内周側に歯があり、外側に歯が出にくいため、狭い場所や外観をすっきりさせたい箇所に向いています。
Q. 歯付きワッシャーは再使用できますか?
A. 基本的には再使用は推奨されません。一度締め付けると歯が変形したり、相手材へ食い込んだりするため、再使用時に十分な食い込みや導通性を得られない可能性があります。
Q. 歯付きワッシャーを使うと座面に傷は付きますか?
A. はい。歯付きワッシャーは歯を相手材に食い込ませる構造のため、基本的に座面へ傷が付きます。化粧面や塗装面、アルミ、樹脂など傷を避けたい材料では注意が必要です。
