ボルトテンショナーとは?仕組み・使い方・油圧トルクレンチとの違いを解説

ボルトテンショナーとは

油圧ボルトテンショナー

ボルトテンショナーとはボルトを回して締める工具ではなく、ボルトを軸方向に直接引っ張って締め付ける工具です。通常、ボルトやナットを締める時はトルクレンチや油圧トルクレンチでナットを回して締め付けます。しかし、この方法ではねじ部や座面の摩擦の影響を受けるため、同じトルクで締めても実際に発生する軸力がばらつくことがあります。一方、ボルトテンショナーはボルトやスタッドボルトのねじ部に専用の部品を取り付け、油圧の力でボルトをまっすぐ上方向に引っ張ります。ボルトがわずかに伸びた状態でナットを着座させ、その後に油圧を抜くことで、ボルトの戻ろうとする力によって高い軸力を発生させます。

ボルトテンショナーはトルクに頼らず、インパクトレンチやハンマースパナ(打撃レンチ)油圧トルクレンチのようにナットやボルトを力任せに回す必要がありません。これらの方法に共通する最大の敵は「摩擦」です。ねじ部の摩擦、そしてナットと座金の間の摩擦を乗り越えるために、ナット/ボルトに加えたトルクエネルギーの80%以上が消費され、ボルト軸部に有効な張力として残るのは20%未満にすぎません。さらに、摩擦損失はボルトごとにばらつくため、同じトルク値やインパクト設定で締め付けても、ボルト張力は均一になりません。

ボルトテンショナー各部名称

ボルトテンショナー各部名称

ボルトテンショナーは油圧を利用してボルトを軸方向に引き伸ばし、適切な軸力を与えるための工具です。主にプーラー、ピストン、シリンダーボディ、ブリッジ、ソケットなどの部品で構成されています。プーラーはナットから突き出したボルトのねじ部に取り付ける部品です。シリンダー内部へ高圧の作動油を送り込むとピストンが移動し、その力がプーラーを介してボルトへ伝わります。これにより、ボルトが軸方向に引き伸ばされます。

 

シリンダーボディはピストンと作動油を内部に収める本体部分です。ピストンの周囲にはシールが組み込まれており、作動油の漏れを防ぎながら内部の油圧を維持します。また、最大ストローク表示部によって、ピストンが許容される移動量の上限に近づいていないか確認できます。シリンダーボディの側面には油圧ホースを接続するためのクイックコネクトニップルが取り付けられています。油圧ポンプから送られる作動油はこの接続口を通じてシリンダー内部へ供給されます。

ブリッジは締結面の上でテンショナーを支え、油圧によって発生する反力を受ける部品です。ブリッジの内部にはソケットが収められており、ボルトを引き伸ばした状態でナットを締結面まで回し下げることができます。油圧を解除するとボルトの伸びが戻ろうとするため、ナットと締結部材の間に軸力が残ります。スナップリングはソケットがブリッジから抜け落ちないように保持するための部品です。また、ブリッジ固定ねじはブリッジをシリンダーボディに保持する役割を担います。

ボルトテンショナー各部品役割一覧

部品名 役割
プーラー ボルトの突出したねじ部にねじ込む部品です。油圧によって発生した力をボルトへ伝え、ボルトを軸方向に引き伸ばします。
ピストン 油圧を受けて移動する部品です。シリンダーボディと組み合わさることで、ボルトを引き伸ばすための力とストロークを発生させます。
最大ストローク表示部 ピストンの移動量が許容範囲の上限に近づいていることを確認するための表示部です。最大ストロークを超えて使用すると工具の損傷や事故につながるおそれがあります。
シールキット ピストンとシリンダーボディの間から作動油が漏れることを防ぎ、内部の油圧を維持するためのシール類です。通常、「シールキット」は交換用部品一式を指します。
シリンダーボディ ピストンと作動油を内部に収める本体部分です。高圧油を受け止め、ピストンとともにボルトを引き伸ばすための油圧力を生み出します。メーカーによっては「油圧ロードセル」や「油圧シリンダー」と呼ばれます。
オス/メスアダプタ シリンダーボディとクイックコネクトニップルを接続するための継手です。ねじ規格や接続方式の異なる部品同士を適合させる役割があります。
クイックコネクトニップル 油圧ホースを着脱するための接続口です。ポンプから送られる高圧の作動油をシリンダー内部へ導きます。複数台のテンショナーを連結できるタイプもあります。
ブリッジ固定ねじ ブリッジをシリンダーボディに保持するためのねじです。ブリッジの脱落を防ぎながら、機種によってはカプラーや窓の向きを調整できるよう、一定範囲で回転可能な構造になっています。
ブリッジ テンショナーを締結面の上で支持し、油圧によって発生する反力を受ける部品です。側面の窓からソケットへアクセスし、ナットを回すことができます。
ソケット 油圧でボルトを伸ばしている間に、ナットを締結面まで回し下げるための部品です。ナットを着座させることで、油圧を解除した後もボルトに軸力を残します。
スナップリング ソケットがブリッジから抜け落ちないように保持する部品です。ソケットの回転を妨げずに脱落を防ぐため、組み付けや作業を行いやすくなります。Boltightの取扱説明書でも、ソケットをブリッジ内に保持するためのリングについて説明されています。

ボルトテンショナーの使用環境

まず前提条件としてボルトの張力作業を行う側でフランジ/継手の面から少なくともボルト径の2倍分のねじ山が突き出ていることを確認してください。この作業は正しく実施することが非常に重要です。適切に行わないとボルトテンショナーとボルトのねじのかみ合いが1径未満となり、ボルトおよび/またはテンショナー側のねじ山を損傷するおそれがあります。

ボルトテンショナーを使用する前の確認事項

ボルトテンショナーはボルト径だけで選定できる工具ではありません。必要軸力、ボルトの突出し長さ、ナット周辺スペース、フランジ形状、同時締結の必要性、使用環境を確認したうえで、適合する機種を選ぶ必要があります。特にナット上面から十分なねじ部の突出しがない場合や、テンショナー本体を設置するスペースが不足している場合は、使用できないことがあります。

確認項目 内容
ボルトの突出し長さ ナット上面からボルト径以上の突出しが必要
締付部の長さ 被締結物の厚さがボルト径の3倍以上、または4倍以上必要とされる場合がある
ナット周辺スペース テンショナー本体が入るスペースが必要
必要軸力 小径ボルトではテンショナーを使うほどの軸力が不要な場合がある
コスト・作業性 小径ボルトでは油圧トルクレンチやトルクレンチの方が合理的な場合が多い

ボルトテンショナーの使用手順

具体的な手順としては以下のような流れでボルトテンショナーが機能します。

  1. ナットの取り付け: ボルトのナットが軽く取り付けられた状態にします。
  2. ボルトテンショナーの装着: ボルトテンショナーをボルトの先端に取り付け、油圧でボルトテンショナーを作動させます。
  3. 引き伸ばし: ボルトテンショナーは油圧を用いてボルトを軸方向に引き伸ばし、張力をかけます。これにより、ボルトにかかる負荷が均等に分配されます。
  4. ナットの締め付け: ボルトが引き伸ばされた状態で、ナットを所定の位置まで締めます。
  5. 解放: 最後に、油圧を解放してボルトテンショナーを取り外すと、ボルトが元の長さに戻り、ナットが固定されます。

この方法により、ボルトの締め付け力を精密に制御できるため、過度な力がかかることなく、均等な締め付けが実現します。

ボルトテンショナーとトルクレンチの違いを解説

ボルトテンショナーはボルトやスタッドボルトのねじ部に専用のプーラーを取り付け、油圧の力でボルトを軸方向に引っ張ることで軸力を与える締結工具です。ボルトを回転させて締めるのではなく、ボルトを伸ばした状態でナットを着座させるため、トルク締付けに比べて摩擦の影響を受けにくいのが特徴です。このため、高い締結精度が求められる場面ではボルトテンショナーが優れた選択肢となります。以下は各項目の比較表です。

比較項目 ボルトテンショナー トルクレンチ
締付方式 ボルトを軸方向に引っ張る ナット・ボルトを回転させる
管理対象 軸力管理に近い トルク管理
摩擦の影響 受けにくい 受けやすい
得意な用途 大型フランジ、大型ボルト、同時締結 幅広い大型ボルト締結
準備 ポンプ・ホース・治具選定が必要 比較的導入しやすい
作業性 複数本同時締結に強い 汎用性が高い
向いている現場 風力、発電所、プラント、圧力容器 建機、産機、メンテナンス、プラント

 

ボルトテンショナーを使用する際の注意点

ボルトテンショナーを使用する際は、ナット上面から十分なボルト突出し長さがあるか、ナット周辺にテンショナー本体を設置できるスペースがあるか、ボルト間ピッチが狭すぎないかを事前に確認します。また、必要軸力に対して適切な機種を選定し、油圧ポンプ・高圧ホース・継手が適合しているかも確認が必要です。作業時は、最高使用油圧や最大ピストンストロークを超えないようにし、加圧中はボルトの軸方向に顔・手・体を置かないようにします。油圧がかかった状態で油漏れを直そうとすることは危険です。さらに、ボルト軸線とナット座面が直角になっているか、座面に歪み・汚れ・傷・異物がないかを確認し、作業後は減圧を確認してからホースやテンショナーを取り外します。

・ナット上面から十分なボルト突出し長さがあるか確認する
・有効締付部の長さが十分にあるか確認する
・ナット周辺にテンショナー本体を設置できるスペースがあるか確認する
・ボルト間ピッチが狭すぎないか確認する
・必要軸力に対して適切な機種を選定する
・油圧ポンプ・高圧ホース・継手の適合性を確認する
・加圧開始前に周囲の作業者へ知らせる
・最高使用油圧を超えない
・最大ピストンストロークを超えない
・加圧中はボルトの軸方向に顔・手・体を置かない
・油圧がかかった状態で油漏れを直そうとしない
・ボルト軸線とナット座面が直角になっているか確認する
・座面の歪み・汚れ・傷・異物を確認する
・作業後は減圧を確認してからホースやテンショナーを取り外す

    ボルトテンショナーよくある質問

    Q. ボルトテンショナーと油圧トルクレンチの違いは何ですか?
    A. ボルトテンショナーはボルトを引っ張って締結するのに対し、油圧トルクレンチはナットやボルトを回転させて締結します。ボルトテンショナーは摩擦の影響を受けにくく、大型ボルトの均一な軸力管理に向いています。

    Q. ボルトテンショナーのデメリットは何ですか?
    A. 油圧ポンプやホースが必要で、作業準備に時間がかかる点です。また、ボルトの突出長さや周辺スペースが不足している場合は使用できないことがあります。

    Q. ボルトテンショナーはどのような現場で使われますか?
    A. 風力発電、石油化学プラント、発電所、高圧配管、大型フランジ、橋梁、海洋構造物など、大型ボルトを高精度に締結する現場で使われます。

    Q. ボルトテンショナーには油圧ポンプが必要ですか?
    A. 油圧式ボルトテンショナーでは、専用の高圧油圧ポンプと油圧ホースが必要です。

    Q. ボルトテンショナーと油圧トルクレンチはどちらが高精度ですか?
    A. 一般的には、ボルトテンショナーの方が高精度に軸力を管理しやすいです。油圧トルクレンチはトルク管理のため、ねじ部や座面の摩擦状態によって実際の軸力がばらつくことがあります。一方、ボルトテンショナーはボルトを直接引っ張って締結するため、摩擦の影響を受けにくく、大型ボルトや重要フランジの均一な締結に向いています。

    Q. ボルトテンショナーは小径ボルトにも使えますか?
    A. 小径ボルトにも使える場合はあります。ただし、ボルトテンショナーは一般的に中〜大型ボルト向けの工具です。使用には、ナット上面からボルト径以上の突出し長さがあることや、テンショナー本体を設置できるスペースが必要です。小径ボルトでは、コストや作業性の面からトルクレンチや油圧トルクレンチの方が適している場合があります。

    Q. ボルトテンショナーはレンタルできますか?
    A. ボルトテンショナーはレンタル対応している会社もありますが、実際には現場条件によって適合する機種が限られるため、レンタルが難しい場合もあります。特にボルトの突出し長さやナット周辺の作業スペース、必要軸力、フランジ形状によって使用可否が変わるため、事前確認なしに選定することはできません。レンタルを検討する場合は、ボルト径だけでなく、締結部の図面や必要軸力、作業環境を確認したうえで相談することが重要です。

    ボルトテンショナーと動力式トルクレンチの使い分け

    ボルトテンショナーが適している現場もありますがすべての大型ボルト締結に最適とは限りません。ボルト突出し長さが不足している場合、設置スペースが限られる場合、作業頻度が高く汎用性を重視する場合は、油圧トルクレンチや電動トルクレンチの方が適していることもあります。

    この記事を書いた人

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