ダブルナットとは?正しい締め方と緩み止めの仕組み・メリットを解説

ダブルナットとは

ダブルナット

ダブルナットとは1本のボルトに対して2つのナットを使用し、振動などによるゆるみを抑制する締結方法です。単にナットを2個重ねるだけではなく、上下のナット間にロッキング力を生じさせることで、ナットが回転しにくい状態を作ります。

ダブルナットのロッキング方法には、上ナットを締める「上ナット正転法」と、上ナットを固定して下ナットを緩め方向へ回転させる「下ナット逆転法」があります。下ナット逆転法は、締付け軸力とロッキング力を独立して管理しやすい方法として研究されており、北海道開発局の「土木工事施工管理基準」の参考資料でも、アンカーボルトの施工方法として示されています。ボルトやナット自体の種類・規格・基本的な役割についてはボルト・ナットとは?種類・規格・サイズ・材質・選び方を解説もあわせてご覧ください。

以下はアンカーボルトにおける施工例として、北海道開発局の施工管理基準を参考にしています。

【参考記事】国土交通省北海道開発局:土木工事施工管理基準(PDF)
PDF内の「ダブルナット(アンカーボルト)の施工について」を参照
https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/jg/gijyutu/slo5pa0000005a51-att/slo5pa000000a1or.pdf
資料では、ダブルナットについて次の内容が示されています。
ダブルナットは振動に対する緩み止めとして、二つのナットを使用してロックする一般的な方法である。
また、正しく機能させるための締付け手順も示されています。
・下ナットを締め付ける
・上ナットを締め付け、トルク管理を行う
・上ナットを固定した状態で、下ナットを逆回転させて締め付ける

この資料によって、元の文章の次の内容を直接裏付けられます。
・ダブルナットは1本のボルトに対してナットを2つ使用する方法である
・ダブルナットは振動に対するゆるみ止めとして使用される
・2つのナットをロックさせることでゆるみを抑制する
・単にナットを2個取り付けるだけではなく、正しい施工手順が必要である

ダブルナットをしないとどうなる?緩み対策が必要な理由

以下の動画では「ダブルナットを使用しない場合にどのような問題が発生するのか?」という視点から、ボルト締結の基本原理と緩み止めの重要性について丁寧に解説されています。

なお、すべてのボルト締結にダブルナットが必要なわけではなく、必要な緩み止め対策は使用条件や設計基準によって異なります。まず前提として、多くのボルト締結では、締付けによってボルトに軸力を発生させ、その軸力によって締結部材を押し付けます。そのため、適切なボルト軸力を維持することは、締結部の機能を保つうえで重要です。

機械設備などでは、振動や繰返し外力によって締結部に相対変位が生じる場合があります。条件によっては、ねじ面やナット座面などに相対すべりが発生し、ナットの戻り回転を伴う自己ゆるみにつながることがあります。自己ゆるみが進行するとボルト軸力が低下し、締結部の機能を維持できなくなる可能性があります。

このような自己ゆるみを抑制する方法の一つがダブルナットです。2個のナットに適切なロッキング操作を行うことで、上下のナットとボルトのねじ面に互いに反対方向の接触力を生じさせ、ロッキング状態を形成します。特に、締結部の緩みや脱落が重大な事故につながる箇所では、使用条件や適用基準に応じた適切な緩み止め対策が重要になります。また、上記の動画では単にナットを二つ重ねればよいわけではない点も強調されています。採用するロッキング方法に応じた適切な手順で施工しなければ、十分な緩み止め効果を得られない場合があります。適切なロッキング操作を行うことで、上下のナット間にロッキング力が形成され、ナットの戻り回転を抑制します。

この動画全体を通して伝えられているのは、ダブルナットは自己ゆるみを抑制するための緩み止め方法の一つであり、適切な施工が重要であるという点です。必要な緩み止め対策が適切に講じられていない場合には、自己ゆるみによる軸力低下や脱落などのリスクが生じる可能性があります。

【参考記事】ダブルナットの作用原理:日本機械学会の研究資料
ダブルナット結合におけるロッキング力の管理方法について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmemecj/2017/0/2017_S1130203/_article/-char/ja/

・ダブルナットは、ボルト締結部の自己ゆるみを抑制する方法の一つである
・十分な締付け力を確保しにくい条件では、適切なロッキング力を導入することで自己ゆるみや疲労破壊の抑制に有効となる場合がある
・効果を得るには、2つのナットの間に適切なロッキング力を導入する必要がある
・単にナットを2個取り付けただけでは、十分な効果を期待できない

ダブルナットのメリット

ダブルナットは、1本のボルトに対して2個のナットを使用し、上下のナット間にロッキング力を発生させることで緩みを抑制する方法です。適切に施工すると、上下のナットがボルトのねじ山に対して互いに反対方向の接触力を生じさせ、ナットが戻り回転しにくい状態を形成できます。そのため、振動などによる自己ゆるみを抑制できることが大きなメリットです。

また、一般的な六角ナットを利用できるため、専用の緩み止め部品を必要としないこともメリットです。必要なねじのかみ合い長さやボルトの突出量を確保できる場合には、既存のボルト・ナット構成にナットを追加して採用できることもあり、比較的シンプルな構成で緩み止め対策を行うことができます。ただし、再使用の可否については、ボルトやナットの損傷、摩耗、腐食、変形などの状態や、適用される規格・施工基準に基づいて判断する必要があります。

ダブルナットのデメリット

ダブルナットは比較的シンプルな緩み止め方法ですが、いくつか注意すべきデメリットもあります。まず挙げられるのは、部材全体の高さが増えてしまう点です。ナットを2個重ねて使用するため、その分だけ突出量が大きくなり、設置スペースに制約がある場所では干渉の原因になることがあります。特に機械内部や狭い箇所では、この高さの増加が設計上の問題になるケースも少なくありません。

次に、作業性がやや悪くなる点があります。ダブルナットは基本的にレンチを2本使い、片方を固定しながらもう片方を締める必要があります。そのため、片手での作業が難しく、狭い場所では工具の取り回しも含めて手間が増える傾向があります。結果として、作業時間が長くなったり、作業者の負担が大きくなったりする可能性があります。

また、締め方を誤ると十分な緩み止め効果が得られないという点も重要です。単に下ナットと上ナットを順番に締め付けただけでは、十分なロッキング状態が形成されない場合があります。ダブルナットでは、採用する方法に応じて上下のナットを相対的に回転させ、適切なロッキング力を発生させることが重要です。例えば下ナット逆転法では、上ナットを固定した状態で下ナットを緩め方向へ回転させてロッキングを行います。

さらに、過度な締め付けによるトラブルのリスクもあります。過大なロッキング力を与えると、ボルトやナットのかみ合いねじ部に大きな荷重が作用し、ねじ山の損傷や、ねじ山がせん断されるストリッピングなどにつながる可能性があります。特に薄形ナットを使用する場合や、ねじ部に損傷・摩耗・変形などが認められる場合は、ナットの強度やねじのかみ合い長さを十分に確認する必要があります。

ダブルナットの緩み止め性能は、締結条件、ロッキング力、振動・外力の大きさや方向などの影響を受けます。そのため、厳しい振動環境や安全上重要な締結部では、必要な緩み止め性能を確認したうえで、使用条件や適用基準に適した緩み止め方式を選定することが重要です。

このようにダブルナットは手軽で有効な方法ではあるものの、使用環境や施工方法によってはデメリットが表面化します。用途に応じて適切に使い分けることが、安全で確実な締結につながります。

また、ダブルナットではロッキング操作によってボルト軸力が変化する点にも注意が必要です。特に下ナット逆転法では、最後に下ナットを戻し回転させる際にボルト軸力が低下する場合があります。そのため、通常の単ナット締結と同じように最初の締付けトルクだけを管理しても、施工完了後のボルト軸力を高い精度で管理することが難しい場合があります。高い精度で軸力管理が要求される締結部では、施工方法や管理方法を十分に検討する必要があります。

ダブルナットの締め付け方法

ダブルナットには大きく分けて「正転法」と「逆転法」という2つの締め方があり、どちらも上下のナット間にロッキング力を発生させ、ナットの戻り回転を抑制する点は共通していますが、ロッキング力を導入する方法が異なります。この違いを理解すると現場での使い分けや説明が非常にしやすくなります。

正転法の手順

上ナット正転法は、下ナットを所定の締付け条件まで締め付けた後、下ナットを回転しないように保持しながら上ナットを締める方向へ回転させ、ロッキング力を発生させる方法です。下ナットを固定した状態で上ナットを締め付けることで、上下のナット間にロッキング力が発生し、ボルトねじ山との接触状態が変化して、ナットが戻り回転しにくい状態を形成します。

ただし、上ナット正転法では、締付け軸力とロッキング力の関係が、ねじ部の軸方向すきま(バックラッシュ)や摩擦条件などの影響を受けるため、両者を高い精度で管理することが難しいという特徴があります。

そのため、上ナット正転法を「軽度の振動向け」や「仮固定向け」と一律に位置づけるのではなく、使用条件や必要な締結性能を踏まえ、適用する施工基準や試験条件に基づいて締付け方法を決定することが重要です。

正転法の場合のトルクの考え方

上ナット正転法では、下ナットを締め付けた後、その下ナットを回転しないように保持した状態で上ナットを締め付け、上下のナット間にロッキング力を発生させます。

注意したいのは、下ナットと上ナットをそれぞれ通常の規定トルクで締めればよいというものではない点です。上ナットを締め付ける過程ではボルト軸力やナット間のロッキング力が変化するため、「下ナット100%、上ナット100%」のように単純な比率で管理することは適切ではありません。

試験条件によっては、下ナットで目標軸力の一部を導入した後、下ナットを固定して上ナットを締め付け、目標軸力とロッキング力を形成する方法が検討されています。ただし、必要な締付け条件はボルト径、ナット、潤滑状態、摩擦条件などによって変化するため、すべてのダブルナットに共通する一律の締付けトルクを示すことは適切ではありません。

重要な締結部では、適用する設計基準や施工要領、メーカーの指定条件などに基づいて締付け管理を行う必要があります。

ダブルナットは自己ゆるみを抑制するための有効な方法の一つですが、すべての使用条件で緩みを完全に防止できるわけではありません。必要な緩み止め性能は、振動や外力の大きさ、締結部の構造、要求される軸力管理精度などによって異なります。

そのため、重要な締結部ではダブルナットを一律に採用するのではなく、適用される規格や設計基準、使用条件に基づいて緩み止め方式を選定することが重要です。緩み止めには、ダブルナットのほか、専用のロックナット、機械的な回り止め、ねじロック剤など複数の方式があります。それぞれ作用原理や施工方法が異なるため、用途に応じて適切な方法を選択します。

ワッシャーを使用した緩み対策についてはワッシャーの種類と役割も参考にしてください。

逆転法の手順

下ナット逆転法では、まず下ナットを締め付け、次に上ナットを所定の方法で締め付けます。その後、上ナットを回転しないように固定した状態で、下ナットを緩める方向へ回転させて上下のナット間にロッキング力を発生させます。この操作によって、上下のナットがボルトねじ山に対して互いに反対方向の接触力を生じ、ナットが戻り回転しにくい状態になります。

ハードロック工業が実施した締付け試験の一例では、下ナットを当初の締付け角度の半分程度戻す条件が用いられています。ただし、これは特定の試験条件における方法であり、すべてのダブルナットに適用できる施工基準ではありません。

逆転法のトルク・角度の考え方

下ナット逆転法では、最後に下ナットを戻し回転させるため、締付け途中のボルト軸力と施工完了後のボルト軸力が同じになるとは限りません。実験では、下ナットを戻す過程で軸力が低下することも確認されています。

また、研究や試験条件の中には、下ナットを最初に締め付けた回転角の一定割合だけ戻す方法もありますが、その角度をすべてのボルトや施工条件に一律に適用することはできません。

したがって、「締付け角度の半分まで戻す」ことを一般的な施工基準として扱うのではなく、使用する設備や構造物に定められた施工要領、設計基準、試験によって確認された条件に従うことが重要です。

下ナット逆転法で厚さの異なるナットを組み合わせる場合、薄形ナットは下側、厚いナットは上側に配置します。ロッキング後は上ナット側のねじ部により大きな荷重が作用するため、薄形ナットを上側に配置しないよう注意が必要です。

下ナット逆転法では、所定のロッキング操作まで適切に行うことが重要です。単に下ナットと上ナットを順番に締め付けただけでは、十分なロッキング効果を得られない場合があります。また、ロッキング操作によってボルト軸力が変化し、ロッキング力も摩擦条件、締付けトルク、戻し角度などの影響を受けます。研究ではトルク法や回転角法によるロッキング力の管理が検討されていますが、実際の施工では使用するボルト・ナット、潤滑状態、作業条件などを考慮して施工条件を管理することが重要です。

施工方法の簡素化や緩み止め施工の再現性向上を求める場合には、ダブルナット以外の専用緩み止めナットも選択肢となります。専用ナットには、くさび作用を利用するものや、回転に対する抵抗トルクを利用するプリベリングトルク形ナットなど、さまざまな方式があります。ただし、方式によって締付けトルクとボルト軸力の関係も異なるため、採用にあたっては必要な緩み止め性能、軸力管理方法、使用環境、施工性、適用規格などを確認することが重要です。

この記事を書いた人

ユネックス合同会社編集部は、産業用ボルト締結工具メーカー「HYTORC(ハイトーク)」の日本法人であるユネックス合同会社が運営する技術情報メディア「ハイトークナビ」の編集部です。トルクレンチ、トルク管理、ボルト締結、軸力、ねじ・ボルト・ナットなど、締結作業に関する情報を中心に発信しています。

ユネックス合同会社は、油圧・電動・空圧式のボルト締結工具の販売・レンタルや、ボルト関連製品を取り扱っています。編集部では、HYTORCの製品・技術資料や取扱説明書に加え、JIS・ISO等の規格、公的機関・業界団体の資料なども確認し、技術的な正確性を重視して記事を制作しています。専門的な内容をできるだけ分かりやすく整理し、ボルト締結やトルク管理に携わる方の課題解決に役立つ情報を提供することを目的としています。